市川市剣道連盟 菅野支部 稽古日記

市川市剣道連盟 菅野支部 市川市立菅野小学校体育館にて活動中!

剣道で「声を出す」ことがなぜ大切なのか

剣道ではしっかりと声をだすように稽古します。

これは剣道400年の歴史の中で、先人の先生方が体得した教えが基になっています。
この教えが科学的に正しいことは、おもに武道専門課程のある大学の先生方の
研究によって確かめられています。

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全日本剣道連盟の剣道指導要領で声を出す目的は、
「自分を励まし気力を充実させる」
「集中力を高め士気高揚させる」
「相手を威圧し、抑制する」
「相手の気の起こりや気の集中くじく」
「相手を惑わせたり、動揺させる」
「相手を引き出し誘う」
「気剣体一致をはかり、打突の強度や正確性を高める」としています。

この目的の中から、
「気持ちを集中させる」
「強い力を一気に出す」
「声をだすことで息を吐く(呼吸法)」について、
人間の体の仕組みとの関係を科学的根拠に基づいて剣道で声を
出すことの大切さを考えてみます。
1.「気持ちを集中させる」

 稽古でも試合でも相手に立ち向かう時は「怖い」「負けるかもしれない」など
の気持ちがあると思います。
この時「やー」と声を出すことで、脳が活性化して高揚してこの「怖い気持ち」
を払拭して「相手に集中する気持ち」に変えることができます。
相手に集中することによって、自然と体が前に出るようになります。
剣道は、一瞬で勝敗が決まります。この一瞬を逃さないためにも集中力は大切です。
このような稽古を重ねることにより集中力を養います。
https://hokkyodai.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=8309&item_no=1&attribute_id=13&file_no=1
 
2.「強い力を一気に出す」

 運動生理学では「シャウト効果」と言います。
人間の体は、筋肉が切れたりする限界を超えないように無意識
に力を弱くしています。
限界を超えてしまうと筋肉が切れてしまいます。

体を守るため、無意識に脳が筋肉の力を制限しておおよそ60~70%
の力に抑えておくようにしています。
したがって、おおよそ30~40%の力を残していると考えられています。
この制限を少なくする方法として、「声を出す」があります。
「声を出す」ことにより、無意識の筋肉の制限が10~20%少なく
なることが研究により確かめられています。

剣道でも、竹刀を早く、強く、遠くに振るために「声を出す」
ことが必要です。
打突するときに「面、小手、胴」と声を出すことにより、
無意識に筋肉の限界を抑える力を弱くして、より遠く、より早く、
より強い打突ができるようにになります。
https://sports-performance.jp/paper/1822/1822.pdf

3.「声をだすことで息を吐く」

 人間の体の仕組みとして、腕を振る、走る、跳ぶなどの体の筋肉を
動かすためには、肺に酸素をためてその酸素を使って筋肉を動かします。
息を吸っている間は、肺に酸素貯めている間であり酸素が少ない時
ですので、筋肉を動かしにくくなります。

 肺に酸素をできるだけ多く取り込むためには、息を吐かない限り
新しい酸素はとり込むことはできません。
 剣道では、「声を出す」ことで息を吐いています。しかし、
ただ「はー」と息を吐く、声を出すだけでは強い力を生み出す事が
できません。

この効果的な方法が「呼吸法」です。
水泳選手は、息継ぎするときだけしか酸素を取り込めません。
このため、水中で泳いでいるときは、常に体幹の横隔膜を使って息を
吐き続けて出し切ってから息継ぎをします。
剣道の「声を出す」稽古を重ねることにより、水泳選手と同じように
心肺能力を高めることができます。

4.「呼吸法 丹田呼吸法」

 息を吐くためにはおなかの真ん中にある体幹の一つである
横隔膜使います。
この方法は、「丹田呼吸法」と呼ばれています。
特に武道、スポーツの競技では、運動能力を上げるため、
丹田を意識した稽古法、練習法を取り入れています。

丹田」を意識した呼吸(声出し)をすると体幹が安定して
強い力を出すことができることから、剣道では、竹刀を早く、強く、
遠くに振るために「丹田」を意識して「声を出す」ことが必要となります。

http://www.chiba-u.ac.jp/general/publicity/press/files/2019/PressRelease_20190724.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/budo1968/18/2/18_63/_pdf/-char/ja

丹田呼吸法」には、大きな力を出すためだけでなく、気持ちを落ち着かせる、
めいそう時の呼吸法でもあります。


 5.「一息の切り返し」「残心」

 切り返しの稽古で、先生方より「一息の切り返し」
打突した後も声を出し続ける」ように教えていただいています。
この稽古法を行うと、「打突した後に声を出し続けることでに集中力が切れない」

「肺の息を出し切ることによる心肺能力の向上効果」があります。

 実際の試合でも、打突した直後の振り向いた時に面、小手などの技
がきまることが多いと思います。
このように攻めを受けることが無いように、打突して最後の最後まで
集中して相手立ち向かう気持ちとその姿勢が「残心」となります。

剣道の「残心」を意識した稽古を重ねることで、心肺能力、
集中力を高めることができます。
 
↑ 10ページ目に五輪書が取り上げられています。

このように、剣道400年の歴史の中で先人の先生方が体得した剣道の教えは、
現代の科学によりその効果が正しいことが確かめられています。
決して「武道だから」「昔からそのように教えられているから」
などの理由ではないことは本当に素晴らしいことだと思います。

「稽古」の意味には、いにしえ(古い、昔のこと)を考えるとの意があります。
改めて、剣道の先人の先生方の教えを考えて稽古をしたいと思います。